「一つの看板の詳細を調べるのに、30分以上かかることもあった。」——それが、非エンジニアの僕がAI(Claude Code)で会社の業務ツールを自作することになった、出発点でした。
僕は屋外広告の会社で働いてる主任です。現場のことはひと通り分かってるつもり。……でも、プログラミングは、できません。コードなんてまともに書いたことがない人間です。
そんな僕が、家でMacに向かってClaudeに相談しながら、看板の情報を1分で引っぱり出せるツールを作ってしまった。しかも今は、会社の社員十数人が毎日使ってます。
自分でも「気づいたら作れちゃってた」感覚が近いんですよね。バイブコーディング——コードを書かずに、AIと会話しながらソフトを組み上げていく、あれです。専門知識ゼロの現場の人間でも、”使う側”から”作る側”に回れる時代になってました。
結論から言うと、非エンジニアがAIで実務ツールを作るのは、もう十分に現実的です。ただ、「とりあえず動くものを作る」と「みんなが毎日、安心して使える」の間には、思ったより深い谷があった。僕がいちばん苦労したのも、実はコードそのものじゃなくて——そっちの谷でした。
- 何に困っていて、なぜ自分で作ろうと思ったのか
- 非エンジニアがClaude Codeでどこまで作れたか(30分で起動・実務投入まで7日)
- 一番の山場=セキュリティと運用(会社のNASでどう回したか)
- 作って何が変わったか(30分→1分)
まずは、そもそも僕が何にそんなに困っていたのか——という話からさせてください。
Excel管理の限界——看板ひとつ調べるのに、30分かかっていた
会社の看板情報は、ずっとExcelで管理してました。どの店舗に、どんな仕様の看板が、何台あるか。一覧としては、ちゃんと存在してるんです。ただ——”見られる”のと”探せる”のは、別なんですよね。
ある日、何年も前に付けた看板の仕様を確認する必要が出てきた。Excelを開いて、スクロールして、目で追って……見つからない。シートが分かれてたり、書き方が人によって微妙に違ったり。結局、当時を知ってそうな同僚に聞いて回ることになる。「あれ、どうだったっけ?」。でも、誰も正確には覚えてない。
さらに厄介なのが、看板の”履歴”が追えないこと。看板って、建てて終わりじゃないんです。数年後に修繕して、劣化すれば建て替えて、テナントが変われば意匠も変わる。しかもそれぞれ、どこの誰が施工したかまで大事な情報になる。この積み重ねを1枚の表で持とうとすると、行を増やせば一覧が崩れるし、列を増やせば横に伸びていくばかりで、どこかで必ず破綻するんですよね。……そうやって気づいたら、30分。看板ひとつの詳細を確認するだけで、30分以上かかることも珍しくありませんでした。
これ、僕だけが困ってたわけじゃないんです。みんな薄々「探しにくいよね」と思いながら、誰も手をつけられずにいた。Excelはとりあえず回ってるし、作り直すなんて大仕事だし、そもそもプログラミングができる人間なんて社内に一人もいない。だから、”しんどいまま”が何年も続いてました。


この「聞いて回る」が地味にしんどいんですよ。相手の手も止めちゃうし、こっちも申し訳ない。で、結局あいまいなまま話が進んじゃうこともあって。
そんな「みんな困ってるのに、誰も直せない」状態に、ある日ふと——手を出してみたんです。
「社内で一番AIが好き」だった僕が、家でこっそり作り始めた
自慢じゃないんですけど、会社の中でAIがいちばん好きな自信”だけ”はあったんです。ChatGPTやClaudeは日常的に触ってたし、バイブコーディング——AIと会話しながらソフトを作る、あれ——にもずっと興味があった。
で、あの看板Excelの”しんどいまま”を眺めてて、ふと思ったんですよね。「これ、僕がやってみればいいんじゃないか?」って。
とはいえ、いきなり会社で「作ります!」と宣言する勇気はない。失敗したら格好つかないですし。だからまずは、家で。Macの前に座って、Claudeに素直に相談するところから始めました。「看板の情報を検索できるツールを作りたいんだけど、僕プログラミングできないんだよね」——そんな、ほぼ雑談みたいな入り口から。
業務の実データは一切使ってません。あくまで自分の頭の中にある”こういうのが欲しい”を、AIと一緒に少しずつ形にしていく感じ。完全に独断で、誰にも言わず、こっそり。ほぼ趣味の延長でした。
そうやってある程度”動くもの”ができたころ。たまたま社長に見せる機会があって、思い切ってプレゼンしたんです。今できること、これからこう運用していきたいこと、追加したい機能。……そしたら、ひとこと「やってみろ」。
そこから、家でのこっそり開発が、会社公認の——業務時間内で進めていいプロジェクトに変わりました。

社長に見せる前夜は、ちょっと緊張しました(笑)。「いや、それExcelでよくない?」って返される未来も、普通にあり得たので。
でも、本当の勝負はここからでした。「自分ひとりで動かす」のと「みんなで毎日使う」の間にある、あの深い谷です。
30分で”動いた”。でも”業務で使える”まで7日かかった
拍子抜けするかもしれませんが、”とりあえず動くもの”は、わりとあっさりできました。体感、30分くらい。
やり方はシンプルで、Claude Codeに「こういうツールが欲しい」「看板の情報をこう検索したい」と日本語で伝えて、出てきたものを動かして、思ってたのと違ったらまた伝えて……の繰り返し。使った言語はPythonですけど、正直に言うと、僕はコードを1行も自分では書いてません。全部Claudeに書いてもらって、僕は「現場でどう使いたいか」をひたすら伝える係でした。

ただ、ここで勘違いしちゃいけないのが——”30分で動いた”のと”みんなの業務で使える”のは、まったくの別物だということ。
最初のバージョンは、言ってしまえば「僕の頭の中だけで成立するツール」でした。自分が作ったから、どこをどう触ればいいか分かってる。でも、それを何も知らない同僚が初日から使えるかというと、全然そんなことはないんですよね。ボタンの配置、入力のしやすさ、打ち間違えたときの挙動……実際に人に触ってもらうと、「え、そこでつまずく?」の連続でした。
だから、動いてからが本番。何人かに試してもらって、「ここ分かりにくい」「こうだったら楽なのに」というフィードバックをもらっては、Claudeと一緒に直す。これを繰り返して、”業務でちゃんと使える”状態になるまで、だいたい7日。最初の30分が嘘みたいに、この7日はみっちりでした。

この「人に触ってもらう」工程がいちばん勉強になりました。自分ひとりだと100点だと思ってたものが、他人の手に渡った瞬間に60点になるんですよ(笑)。
ちなみに、これを全部やってたのは家のMacBook Air(M5・32GB)です。同じMacでローカルAIを動かしてみた話も別に書いてるので、AIまわりが気になる方はこちらもどうぞ。
そして、その7日でいちばん頭を悩ませたのは——実はコードでも使い勝手でもなく、もっと手前の問題でした。
一番の山場は、コードじゃなくて”運用”だった
「作る」より何倍も悩んだのが、ここです。みんなで毎日使うとなると、急に現実的な問題が押し寄せてくるんですよ。
まず、データをどこに置くか。看板の情報は会社にとって大事な資産だから、変なところには置けない。かといって、僕はセキュリティの専門家でもない。だから最初に決めたのは、シンプルに「社外に出さない」ことでした。ネットの向こうのサービスに預けるんじゃなくて、会社の中だけで完結させる。
そこで行き着いたのが、会社のNAS。(NASって、ざっくり言えば”社内のみんながアクセスできる共有の保管庫”みたいなものです。) ツールの本体をこのNASの中に1つ置いて、それぞれのPCから呼び出して動かす形にしました。
この”NASに本体を1つ置く”やり方、非エンジニアの僕には想像以上に相性がよかったんです。ひとつは、アップデートが一瞬で終わること。直したい所が出てきても、NASにある本体を1回直すだけで、全員に反映される。改善のたびに全員のPCへ配り直す、みたいな消耗がまるごと要らない。もうひとつは、バックアップ。誰かがツールを起動するたびに自動でバックアップを取るようにしたので、「間違えて消しちゃった」「データが飛んだ」を、根性じゃなく仕組みで防げる。これで、みんなが気軽に触れるようになりました。
もちろん、いまはExcelもオンラインで共同編集できます。じゃあ、なぜわざわざ作ったのか。理由は「同時に開けるかどうか」じゃなくて——Excelが表計算ソフトである限り超えられない部分があったから、でした。
たとえば、看板1つに対して「いつ建てて、いつ修繕して、いつ意匠を変えて、いつ建て替えたか」——しかもそれぞれ、どこの誰が施工したかまで——を、ずっと積み上げていくこと。店舗と建物と看板の関係を、崩さずに保ち続けること。種類や業者の呼び方を揺らさないこと(「独立看板」と「独立サイン」が混ざると、もう検索できません)。こういうのを行と列だけで持とうとすると、どこかで必ず破綻するんですよね。人数が増えるほど、なおさら。
だから中身は”表”じゃなくて、データベースで作ってもらいました。あとは単純に、看板の情報を社外のサービスに置きたくなかった、というのも大きいです。

実際の画面がこれです。左から建物、看板の一覧、選んだ看板の詳細。右下を見てもらうと、その看板に「いつ・何をして・どこが施工したか」が1件ずつ積み上がっていくのが分かると思います。ここが、僕がExcelで一番やりたくてできなかったところでした。

実のところ、この設計を全部自分でひらめいたわけじゃありません。「みんなで使いたい、でも壊れると怖い」という”困りごと”をそのままClaudeにぶつけて、一緒に落としどころを探した結果です。でも——どんな運用ならチームが安心して使えるかを判断できたのは、現場を分かってる僕だったからかな、とは思ってます。

ちなみにこのNAS、会社に導入したのも僕なんです。だから”ここに置けばみんなで安全に共有できる”って、相談してる途中で絵がすぐ浮かんだ。看板ツールのために入れたわけじゃないのに、土台が先にあった感じで結果オーライでした(笑)。
こうして、家でこっそり作り始めたツールは、今では十数人が毎日使う”当たり前”になりました。じゃあ実際、どれだけ変わったのか——数字で振り返ってみます。
30分が1分になった——そして「めっちゃいいじゃん」と言われた日
結果から言いますね。看板ひとつを調べるのに30分以上かかっていたのが、今は——ツールを起動する時間まで含めても、1分くらい。
検索窓に店名や条件を打ち込めば、欲しい情報がすぐ出る。「あれ、どうだったっけ?」と同僚に聞いて回ることも、Excelを延々スクロールすることも、もうありません。たしかに、入力する手間まではゼロにならない。データを打ち込む作業自体は残ってます。でも、Excelにチマチマ打っていた頃より確実に速いし、なにより”探す”のは雲泥の差になりました。

でも——僕がいちばん報われたのは、この数字より、同僚のひとことでした。
できあがったツールを使った同僚に、「めっちゃいいじゃん!」って言われたんです。
なんてことない一言かもしれない。でも、家でこっそりClaudeに相談してたところから始まって、7日間みっちり作り込んで、その全部が「めっちゃいいじゃん」の一言に報われた気がして。地道な改善の連続だったぶん、あれはグッときました。

「作ってよかった」って、こういう瞬間に来るんですね。スペックでも新機能でもなく、隣の席の人が楽になったのを見たとき。
じゃあ、僕みたいな非エンジニアが同じことをやるなら——? 7日でつかんだコツと、ハマりやすい落とし穴を置いておきます。
非エンジニアがAIで業務ツールを作るなら——コツと落とし穴
偉そうに語れる立場じゃないんですけど、実際にやってみて「これは先に知っておきたかった」と思ったことが、いくつかあります。
うまくいったコツ|小さく始めて、人に触ってもらう
いちばんは、自分の”困りごと”ひとつから始めること。壮大なアプリを目指すんじゃなくて、「これがしんどい」を1個だけ解決する。僕の場合は”看板を探すのが遅い”、それだけでした。狙いが小さいほど、AIとの会話も具体的になって、変な迷子になりにくいんです。
次に、”動いた”はゴールじゃなくスタートだと知っておくこと。さっきも書いたとおり、価値が出るのは人に触ってもらって直したあと。30分でできた最初の版を「完成」と思わないことが、たぶんいちばん大事です。
そして——現場を分かってる人が、いちばん強い。コードはAIが書いてくれます。でも「現場で本当に必要なのは何か」はAIには分からない。そこを握ってるのが、非エンジニアの最大の武器だと思ってます。
ハマりやすい落とし穴|データの置き場所と、その後の運用
ひとつめ、データの扱いは最初に決めること。AIが書いたコードって、中身を全部は僕も理解しきれてないんですよ。だからこそ、大事な情報を安易にネットの向こうへ投げない。僕は「社外に出さない・会社の中で完結させる」を大前提にしました。ここは慎重すぎるくらいでちょうどいいです。
ふたつめ、作りっぱなしにしないこと。壊れたとき・消えたときにどう戻すか、直したものをどう配るか。この”運用”を考えておかないと、せっかくの便利ツールが、ある日ただの不安の種に変わります。
みっつめ、AIに全部は委ねきらないこと。書くのは任せていい。でも「何を作るか」「どう使うか」の舵だけは、自分で握る。ここを手放すと、出てきたものに振り回されて、結局よく分からないものが手元に残ります。

「AIがあれば誰でも作れる」って言葉、半分ホントで半分ウソだと思ってます。作るのは、本当に誰でもできる。でも”ちゃんと使えるもの”にするには、現場の知恵がいるんですよね。
さて。ここまで読んでくれたあなたに、最後に伝えたいことがあります。
「作れない側」だと思ってた
ほんの少し前まで、僕は完全に「使う側」の人間でした。便利なツールは、どこかの誰か——プログラミングができる人が作るもので、自分には縁がない。そう思い込んでたんです。
それが、家でClaudeに「これ作りたいんだけど」と話しかけた、あの夜から変わりました。コードは1行も書けないままなのに、気づけば会社の困りごとをひとつ、自分の手で片付けてた。十数人の毎日が、ちょっとだけ楽になった。
すごい技術を身につけたわけじゃないんです。僕がやったのは、”困ってること”をAIに素直に話して、現場の目線で「こうしたい」を伝え続けただけ。それだけで、”作れない側”から”作る側”に、線をまたいでしまった。
正直、いちばん驚いてるのは、僕自身かもしれません。
もしあなたが今、「これ手作業でやるの、しんどいな」と思ってる何かを抱えてるなら——プログラミングができるかどうかは、もう入り口の条件じゃない気がします。AIに話しかけてみるところから、案外あっさり、景色が変わるかもしれませんよ。
――もし「うちのこの作業も、ずっとExcelでしんどいんだよな」って方がいたら、X(@menverse_jp)かお問い合わせから気軽に声かけてください。受注とかそういう話じゃなくて、同じように現場でモヤモヤしてる人と「うちはこうしたよ」を交換できたら、単純に楽しいので。




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