
いつも一緒にゲームをしている相手に、黙ってマイクを変えてみました。
いつもはShure MV7+。4万円台の、有線のダイナミックマイクです。それを、届いたばかりのDJI Mic Mini 2Sに差し替えて、そのまま1時間以上しゃべりました。
何も言われませんでした。
DJI Mic Mini 2Sが発売されたのが2026年8月4日。僕の手元に届いたのが8月7日なので、発売から3日後に届いた実機です。マイクを買う前、一番引っかかっていたのがここでした。小さいワイヤレスマイクに変えたら、音質って落ちるんじゃないの? と。
配信用にちゃんとしたマイクを持っている人ほど、この不安はあると思うんですよ。せっかく音にこだわってきたのに、動画のために手軽なピンマイクを足したら、そこだけ音が安っぽくなるんじゃないか。
結論から言うと、声を主役に録るなら、これで十分でした。
ただ、「十分」の一言で片付けると嘘になる部分もあって。胸元に付けると、音は確かに変わります。それでも僕は胸元に付け続けるし、それでいいと思っている。その理由まで含めて書きます。
この記事は、4万円台の有線マイクを持っている人間が、1万円台のワイヤレスピンマイクを買い足して、実際に聴き比べた記録です。
そして——録り比べた音声を、そのまま記事に貼ってあります。
「こもる」とか「サ行の抜けが悪い」とか文章で言われても、正直ピンと来ないと思うんですよ。なので5本まとめて、この記事の中で聴けるようにしました。 マイクの違い、装着位置の違い、ノイズキャンセリングの効き方。全部その場で耳で確かめられます。
- 録り比べた音声サンプル5本(記事内でそのまま再生できます)
- Shure MV7+と実際に録り比べた結果
- 聞き慣れている相手に黙って変えたら、どうなったか
- DJI Mic 3・ショットガン型を外して、この構成を選んだ理由
- 胸元と口元で、音が何がどう変わるのか
- 使ってみて微妙だったところ
先に値段だけ見ておきたい方は、こちらからどうぞ。
配信用マイクを持ってるのに、ワイヤレスピンマイクを買い足した理由
Shure MV7+を買ったのは2024年9月。以来、ゲーム中のDiscord通話はずっとこれです。マイクとしての不満は、ひとつもありませんでした。
じゃあなぜ買い足したのか。始まりはすごく単純で、α7IIIに直接繋げて使えるマイクが欲しかったからです。
カメラの内蔵マイクって、それなりには録れるんですが、レンズによってはAF音をめちゃくちゃ拾うんですよ。動作音のうるさいレンズを付けた日には、声の後ろでずっとジーコジーコ鳴ってる。それを避けたくて、カメラに繋げる外部マイクを探し始めたのが入口でした。
そこから調べていくうちに、「これ、できることが一気に増えるな」と思うようになって。
- 首元に付けられるので、カメラの位置と関係なく声を拾える
- カメラに直接繋げるから、映像と音が最初からひとつのファイルにまとまる
- MV7+が空くので、手元のガジェットの操作音を録る役に回せそう
- これから撮っていく子どもの映像でも使えそう
特に3つ目は、買ってから気づいた発想じゃなくて、買う前の段階でわりと大きい理由でした。マイクが2本あれば、声と手元の音を別々に録るという選択肢が生まれる。1本しかないうちは、そもそも考えることすらなかった話です。
じゃあ何を買うか——ここから1ヶ月近く迷うことになります。

ショットガン型を選ばなかった|「距離が一定」であることの価値
最初に候補に挙がったのは、カメラに載せるショットガンマイクでした。SONY純正のECM-B1M、ゼンハイザーのMKE200あたり。カメラのホットシューに載せるだけで完結するし、見た目もスマートです。
でも考えていくうちに、これは自分の用途に合わないと気づきました。
ショットガンマイクはカメラ側にマイクが固定される。つまり、一定の音で録りたければ、マイクとの距離を意識しながら喋らないといけない。ちょっと身を乗り出せば大きくなるし、引けば小さくなって部屋の響きが増える。座って撮る動画でも、意識の片隅にずっとそれがある。
ピンマイクは逆です。マイクが自分の体に付いているので、僕がどう動こうと口との距離は変わらない。何も考えなくていい。
つまり、こういうことなんですよ。
「口に近いこと」より「距離が一定であること」に価値がある。
そしてこの理屈が一番効いてくるのが、子どもを撮るときです。走り回る子どもをショットガンマイクで追いかけたら、距離は変わり放題。でも本人に付けておけば、だいぶ離れても声はちゃんと拾える。
ちなみにYouTube用の撮影で動き回る予定はありません。机の前に座って撮ります。それでもピンマイクを選んだのは、座っていても「距離を気にしなくていい」こと自体が普通に楽だからです。

DJI Mic 3を外した理由|タイムコードは要らない。でもタッチスクリーンは羨ましい
ピンマイクに絞った時点で、次の分岐がDJIのラインナップでした。上位のMic 3にするか、Mini系にするか。
Mic 3を外した決め手はタイムコードです。複数のカメラで同時に撮って、後から映像と音を自動で同期させる機能。プロの撮影現場では必須級ですが、僕がこの先しばらく複数台で撮ることはまずない。使わない機能に金を払う理由がなかった。
ただ、正直に書いておきます。レシーバーのタッチスクリーンは羨ましいです。
Mini系は本体にボタンとLEDしかなくて、細かい設定は全部スマホアプリ経由になります。受信機に画面が付いていて、その場でサッと設定を変えられるのは、素直にいいなと思う。ここはMic 3に負けを認めるところ。

タイムコードって言葉、この製品を調べるまで自分には縁のない機能だと思ってました。実際縁がなかった(笑) でも「複数台で撮る日が来たら欲しくなるやつだな」というのは分かる。将来の自分がうらやましがりそう。
1TX+1RXにした判断|ケースは欲しい。でもギャンブルはしたくなかった
最後まで迷ったのが構成です。送信機1個の最小構成にするか、送信機2個+充電ケースのセットにするか。ここはかなり悩みました。
充電ケースは、正直ちょっと欲しかった。 ケースに放り込んでおけば充電が終わってるし、持ち運びもまとまる。
でも、ケース付きは送信機2個のセットしかないんですよ。つまりケースが欲しいと、当面使う予定のないマイクをもう1個買うことになる。それで倍近い金額を払うのかと。
しかもこの時点では、DJI Mic Mini 2Sが自分にとって「喜んで使える性能」かどうかも分かっていませんでした。届いてみたら微妙だった、という可能性も普通にある。
未知の性能に倍の金額を賭けるのは、ギャンブルだなと。
それで最小構成にしました。使ってみて足りなければ、送信機は後から1個だけ買い足せます。

受信機がスマホ直挿し専用の「モバイル受信機」になっているセットもあるんですが、あれは最初から候補にすら入りませんでした。カメラに繋げないので。僕にとってはα7IIIに繋げることが出発点だったので、そこが欠けている構成はどれだけ安くても選べないんですよね。
さて、ここまでが「買うまで」の話です。ここからが本題——4万円台の有線マイクと、実際に聴き比べてみます。
Shure MV7+と聴き比べてみた
届いたその日に、両方のマイクで同じことを喋って録りました。
内容は「今これで録音してます」みたいな、なんてことない一言です。凝ったことはしていません。それぞれの録音の中で、自分がどのマイクを使っているかを喋っているので、文章は完全に同一ではありません。聴きながら「今どっちを聴いてるか」が分かるようにしています。
そのうえで、条件をひとつだけ足しました。
サーキュレーターを回しっぱなしにして録ったんです。
静かな部屋で録れば、どんなマイクでもそれなりに綺麗に録れます。でも実際に動画を撮る部屋って、エアコンが回ってたりPCのファンが唸ってたりするじゃないですか。だったら最初からノイズがある状態で比べた方が、実際に使うときの答えに近いはずで。

音声サンプル|まずは聴いてもらった方が早い
文章で音を説明するのって限界があるので、まず聴いてみてください。どちらも普段使っている設定のまま録っています。
どうでしょうか。「言われれば分かる」くらいの差だと思うんですが、この差が何なのかを次で分解します。
胸元だと何が変わるのか|反響音とサ行の抜け
先に書いておくと、胸元に付けた状態だと、MV7+との差は分かります。
高校が音楽科だった影響なのか、こういう差は普段からわりと気になる方なんですが、今回聴こえたのは具体的にこの2つでした。
- 周りの反響音が少し混じる
- サ行の抜けが少し悪くなる
「音がこもる」とざっくり言ってしまうこともできるんですが、分解するとこの2点です。そしてこれ、マイクの性能が低いから起きてるわけじゃない。
口から離れた場所にマイクがあると、口から直接届く音の割合が減って、そのぶん部屋で跳ね返った音の比率が上がります。これが反響音が混じって聴こえる正体。サ行みたいな高い音は特にまっすぐ飛ぶ性質があるので、アゴの下に隠れる胸元まで回り込みにくい。だから抜けが悪くなる。
つまり置き場所の問題なんですよ。それを確かめるために、次の実験をしました。
口元まで近づけたら|ほぼ同じ音になった
DJI Mic Mini 2Sを手に持って、MV7+と同じくらいの高さ——口元まで持ち上げて録り直してみました。設定は胸元のときと一切変えていません。変えたのは位置だけです。
ほぼ同じでした。
「近づいた」じゃなくて「ほぼ同じ」です。反響音の混じりも、サ行の物足りなさも消える。1万円台のワイヤレスマイクと4万円台の有線ダイナミックマイクを比べているという事実を思い出すと、これは素直にすごいと思いました。
ただ、ここで大事なことがひとつあって。
実際に使うときは、ほとんどの場合口元では使いません。胸元か襟元に付けます。マイクを口元に掲げながら動画を撮る場合もありますが。
つまりこの実験で分かったのは「近づければ良くなる」という当たり前の話ではなくて、MV7+との差の正体が、マイクの実力ではなく距離だったということです。マイクそのものは、口元に置けばあそこまで迫れる。
なので僕は、胸元に付けたときの音を「このマイクの音」として受け入れて使っています。それを分かった上で胸元に付ける。選択肢は最初からそれしかないので。

聴き比べって、やり始めると沼なんですよ。1回目は「お、違うな」で済むんですが、3回目くらいから自分の耳が信用できなくなってくる(笑) 最後は「もう分かんねぇ」となって、その日は寝ました。
ノイズキャンセリング|サーキュレーターを回しながら試した
ここは検証してみて、結論がひっくり返ったところです。
まず、ノイズを出す側の条件を書いておきます。ダイソンのサーキュレーターを、真横で全開。普通の撮影ではまず起きない、かなり意地悪な環境です。
この状態で録ると、ノイズキャンセリングなしでは当然ゴーッという音がしっかり入ります。
これを「強」にすると、ノイズはほぼ消えます。
ただ——声も少し変になりました。
ノイズが強すぎて、処理がガッツリかかるんですね。ノイズを削るついでに声にも手が入って、加工された感じが出てくる。「ノイズは消えたけど、これはこれで使いにくいな」という音です。
じゃあダメなのかというと、そうではなくて。うるさくない環境で同じことをすると、ノイズキャンセリング強でも違和感がまったくありません。
実際に最初の音声もノイズキャンセリング強で録音しているので、もう一度聴いてみてください。
つまり、こういう線引きになります。
| 環境 | ノイズキャンセリング「強」の結果 |
| エアコンやPCファン程度の環境 | 声はそのまま。安心して使える |
| サーキュレーターを真横で全開 | ノイズは消えるが、声も少し変わる |
実用上は、前者で十分だと思います。動画を撮るときに、真横でサーキュレーターを全開にしている人はまずいません。エアコンの音やPCのファン音を消したい、くらいの用途なら声を犠牲にせずノイズだけ消せます。
ただ「どんな環境でも万能」ではない。処理には限界があって、その境目はちゃんと存在する。そこは知っておいた方がいいと思います。
ひとつ注意書きを置いておきます。ここで書いた評価は全部「声を綺麗に残す」ことを目的にした撮り方での話です。 環境音も含めて自然に録りたい撮影は僕自身がまだ試していないので、そこは分かりません。虫の声や街の音を作品として録りたい人は、別の検証を探した方がいいと思います。
さて、ここまでは僕がひとりで聴き比べた話でした。次は他人の耳で試した結果を書きます。ここが今回、一番面白かったところです。
1時間の通話で、相手はマイクが変わったことに気づかなかった
自分ひとりで聴き比べていると、だんだん自分の耳が信用できなくなってきます。
じゃあ他人の耳を借りればいい。そう思って、普段の通話でこっそりマイクを入れ替えてみました。
聞き慣れている相手に、黙って変えてみた
ゲーム中のDiscord通話は、いつもMV7+です。つまり相手は、MV7+で録られた僕の声を聞き慣れている。
その日、僕はマイクをDJI Mic Mini 2Sに差し替えました。受信機をUSBケーブルでPCに挿すと、「ワイヤレスマイクRX」という名前で認識されます。Discordの入力デバイスをそれに切り替えるだけ。設定はこれで終わりです。
そして、マイクを変えたことは言いませんでした。
その日も1時間以上しゃべりました。ゲームの話をして、いつも通りの雑談をして、通話を切りました。
最後まで、何も言われませんでした。
ここまでなら「まあDiscordだしね」で終わる話かもしれません。でも、ひとつ条件を足すと意味が変わってきます。
その相手、Shure MV7+を使ってるんですよ。
聞き慣れているだけじゃなく、同じマイクを自分でも使っていて、その音を知っている。耳の基準を持っている相手です。その人が、1時間以上しゃべって何も言わなかった。
4万円台の有線ダイナミックマイクから、1万円台のワイヤレスピンマイクに変わっていたのに、です。

PCに挿すと「ワイヤレスマイクRX」って素っ気ない名前で出てくるんですが、この分かりやすさ、逆に好きです。凝った製品名で表示されるより、どれがどれだかすぐ分かる。
自分の耳では|若干の違いはあった。でも
念のため書いておくと、僕自身は違いを感じていました。
聴き比べの実験をやった後だったので、どこが変わるかは分かっています。「あ、いつもよりちょっとこもってるな」くらいの感覚はありました。
ただ、それもDiscordを通すとかなり分からなくなる。
通話アプリの音声は、リアルタイムで送るために圧縮されています。原音の細かい差は、その過程でだいぶ削られる。マイクの前で聴き比べたときに聴こえていた反響音やサ行の差は、Discord越しだとほとんど埋もれてしまう感覚でした。
これ、裏を返せば通話・配信用途ならマイクの選択肢はかなり広いということでもあります。原音を極めても、通る道が細ければ差は残らない。
一番よかったのは|位置を気にしなくていいこと
そして、この日一番よかったのは音質の話じゃありませんでした。
マイクとの位置関係を、一度も気にしなくてよかったことです。
MV7+を使っているときは、無意識にマイクの前に体を持っていってます。ゲームで前のめりになれば近づくし、背もたれに寄りかかれば離れる。飲み物を取りに手を伸ばせば、声はマイクの外を向く。それを「まあ聞こえてるだろ」と思いながら1時間やってるわけです。
これ、自分だけの話じゃなくて、通話してると相手の声が急に遠くなることもよくあります。マイクから離れたのを忘れてしゃべってるやつです。据え置きマイクを使ってる人なら、たぶん全員やってる。
ピンマイクだと、これがまるごと消えます。
胸元に付いてるので、どんな姿勢になろうと口との距離は変わらない。のけぞろうが横を向こうが、声は同じ大きさで届く。めちゃくちゃ楽でした。
記事の前半で「口に近いことより、距離が一定であることに価値がある」と書きましたが、それを一番実感したのが、動画撮影じゃなくてこの通話だったのは自分でも意外でした。
音質のために買ったわけじゃないマイクで、通話が快適になってしまった。これは完全に想定外の収穫です。
さて、本来の目的だったカメラとスマホの話に戻ります。ここでひとつ、詰まったポイントがありました。
DJI Mic Mini 2Sをカメラとスマホで使ってみた
そもそもこのマイクを買った理由は、α7IIIに繋げる外部マイクが欲しかったからでした。ようやく本題です。
ソニーα7III|内蔵マイクとの差は歴然
接続はアナログです。受信機からケーブルを伸ばして、カメラのマイク端子に挿すだけ。受信機はホットシューに載せます。
カメラに付けた見た目、すっきり収まってていいですよ。小さいので、カメラの上に何か生えてる感じにならない。
録れた音は、内蔵マイクとは比べるまでもなくクリアでした。
内蔵マイクの一番きついところって、音質そのものよりレンズの動作音を拾うことなんですよね。AF音のうるさいレンズを付けて動画を回すと、声の後ろでジーコジーコ鳴り続ける。あれが入るともう、その素材は使い物になりません。
外部マイクにすれば、マイクとレンズが物理的に離れるので、この問題から解放されます。
ひとつ補足しておくと、今回はそのAF音を検証できていません。というのも、テスト時に付けていたのがタムロンの25-200mmで、このレンズ、そもそもAF音がほとんどしないんですよ。静かなレンズで静かに録れても、証明になってない。
とはいえ、マイクは胸元でレンズからかなり離れているので、うるさいレンズでも拾いにくいだろうとは思っています。ここは今後、実際に音の出るレンズで試したら追記します。

Galaxy Z Fold7|プロ動画モードで入力を選べる
スマホでも試しました。僕のメイン端末はGalaxy Z Fold7です。
繋ぎ方は、受信機に専用のUSB-Cアダプタを取り付けて、そこにスマホを挿す形になります。
問題は「スマホがちゃんと外部マイクとして認識してくれるか」なんですが、これは純正カメラアプリの「プロ動画」モードを使えば解決しました。このモードには音声入力を選ぶ項目があるので、そこで外部マイクを指定してやればいい。
音は、スマホの内蔵マイクとは大違いです。
Androidは機種によって外部マイクまわりの挙動が変わるので、「Fold7では純正カメラアプリのプロ動画モードで問題なく動いた」という実例として書いておきます。
アップデートは、送信機だけ手順が違う
買ってすぐ、スマホのアプリからファームウェアのアップデートをかけました。ここで知っておくといいことがひとつあります。
受信機と送信機で、手順が違います。
- 受信機:スマホに繋げば、そのまま更新できる
- 送信機:一度スマホと直接Bluetoothで繋ぐ必要がある
送信機の方は、受信機経由ではなく、送信機そのものをスマホにペアリングさせる必要があるんですね。知らないと「なぜ受信機だけ更新できて、こっちはできないんだ」となるところです。
なお、これが充電ケースなしの構成だけの挙動なのかは分かりません。ケース付きだとまた違う可能性はあります。
次は、使ってみて微妙だと感じたところを書きます。
使ってみて微妙だったところ、3つ
ここまでかなり褒めてきたので、引っかかった点もちゃんと書いておきます。3つあります。
付ける位置に、ちょっとコツが要る
DJI Mic Mini 2Sは、マグネットで服を挟んで固定します。表と裏から磁石で挟む方式なので、クリップのように生地を噛まなくていい。服が傷まないのは利点です。付属のクリップを使うこともできます。
ここでやってしまいがちなのが、クリップでTシャツの襟に留めること。
襟って、生地が薄くて柔らかいんですよ。そこにマイクの重さがかかると、生地ごと前に倒れます。そうなるとマイクが口ではなく下を向く。前半で「胸元だと反響音が混じって、サ行の抜けが悪くなる」と書きましたが、あれがさらに一段進んだ状態になります。
対処はかんたんで、襟より少し下、胸元にマグネットで留めればいい。そこなら生地が二重になっていたり、面で支えられたりするので、倒れません。
知っていれば避けられる話なので、大きな欠点ではないです。ただ最初に襟へ留めて「なんか音がこもるな」と思う人はいそうなので書いておきます。

細かい設定は、スマホアプリからしかできない
Mini系は本体にボタンとLEDしかありません。なので細かい設定は全部スマホアプリ経由になります。
ここは最初、少しストレスでした。ちょっと設定を変えたいだけなのにスマホを取り出してアプリを開く、という手間が挟まる。Mic 3のタッチスクリーンが羨ましくなるのは、まさにこの瞬間です。
ただ、使っているうちに評価が変わりました。
最初に設定を決めてしまえば、あとは本体のボタンだけで足りるんですよ。
ノイズキャンセリングのオン・オフも、内部録音の開始も、本体側で操作できます。内部録音なんて電源ボタンを短く1回押すだけで、LEDが光って録音状態に入る。撮影中にいじりたくなるのはこのあたりなので、実用上はほとんど困りません。
しかもアプリ側では、電源を入れた瞬間から録音を始めるといった動作まで指定できます。そこまで仕込んでおけば、現場でアプリを開く場面はさらに減ります。
なので結論としては、「初期設定だけ面倒。運用は楽」でした。
充電のたびにケーブルを挿す
僕が買ったのは充電ケースなしの構成なので、充電のたびにUSBケーブルを挿す必要があります。
ケースがあれば放り込むだけで済むところを、いちいちケーブルを繋ぐ。これは面倒です。
とはいえ許容範囲でした。毎日使い倒すような使い方をしていないのもありますが、それ以上にこのケーブルが充電以外の役にも立つからです。
送信機をマグネットケーブルでPCに繋ぐと、内部録音したデータにそのままアクセスできます。充電のために抜き挿ししているケーブルが、そのままデータの取り出し口にもなっている。そう考えると、ケーブル1本で完結するのは悪くない。


とはいえ、ここだけはケース付きにしなかった判断が少し揺れました(笑) 充電のたびに「ケースあったら楽なんだろうな」とは思う。ただそのために使わない送信機をもう1個買うのかと言われると、やっぱり今の選択でよかったなと思い直します。
さて、最後にひとつ。この記事を書きながら気づいて、自分でもちょっと驚いた話をさせてください。
耳で設定を詰めていったら、Shure MV7+と同じ場所に着いた
DJI Mic Mini 2Sは、アプリでいくつか音の設定をいじれます。僕は届いてから何日か、いろんなパターンを試していました。
理屈で選んだわけじゃなくて、単純に聴き比べて決めていきました。高校が音楽科だったからか、こういうのは説明文を読むより耳で決めた方が早い。
そうやって落ち着いた設定が、この2つです。
- ローカット:オフ → オンに変更
- ボイストーン:レギュラー → ブライトに変更
どちらも初期設定から変えています。低い方の余分な成分を切って、声の抜ける帯域を持ち上げる。これが自分の声には合っていました。
で、この記事を書きながら、MV7+側の設定を並べてみたんです。
そうしたら、こうなりました。
| DJI Mic Mini 2Sで僕が選んだ設定 | Shure MV7+の設定 | |
| ローカット オン | ハイパスフィルター 75Hz | 同じ |
| ノイズ低減「強」 | リアルタイム・デノイザー オン | 同じ |
| 適応ゲイン制御(ラウドネスバランス) | 自動レベル オン | 同じ |
| ボイストーン「ブライト」 | トーン「ナチュラル」 | 逆 |
3つは、同じことをやっていました。
低い方の余分な成分を切って、ノイズを削って、音量を自動で均す。MV7+に寄せようなんて、まったく考えていませんでした。ただ聴いて、良いと思った方を選んでいっただけです。それが結果的に、4万円台のマイクが最初から積んでいる処理と同じ構成になっていた。
でも、最後のひとつだけが逆でした。
MV7+のトーンは「ナチュラル」。素のままで足りているんです。一方の僕は、DJI側のボイストーンを「ブライト」まで持ち上げていた。
これ、たぶん偶然じゃありません。この記事の前半で書いた話と、きれいに繋がるんですよ。
胸元に付けると、サ行の抜けが悪くなる。
高い帯域が削れる場所にマイクを置いているから、耳が「もっと持ち上げてくれ」と判断した。だからブライトを選んだ。理屈で考えたわけじゃないのに、足りないものをちゃんと足していたわけです。
つまり、こういうことなんだと思います。
「声をクリアに録る」という目的に対する答えは、ある程度決まっている。
MV7+は、その答えが最初から作り込まれた状態で届きます。デスクに置いて喋る、という用途に全部合わせてあるので、箱から出した時点でほぼ完成している。
DJI Mic Mini 2Sは、そこまで自分で持っていく必要がありました。しかも、胸元に付けるぶんのハンデを埋める補正まで込みで。
これ、手間といえば手間です。でも裏を返せば、自分の声と付け方に合わせて詰められるということでもある。プリセットを切り替えて聴き比べるだけなので、身構えるほどの作業でもありません。
やり方は違うけど、行き先は同じでした。
ただ、誤解のないように書いておくと、設定を揃えたから同じ音になる、という話ではありません。マイクそのものの構造も指向性も違います。胸元に付けたときの差は、前半で書いた通り実在します。
それでも、耳だけを頼りにいじった結果が、同じ方向を向いていたというのは、僕にとってちょっとした発見でした。

この気づき、記事を書いてなかったら一生気づかなかったと思います。設定をいじってるときは「なんかこっちの方がいいな」くらいの感覚しかなかったので。書くために調べ直すと、自分がやってたことの意味が後から分かる。これがあるからレビューを書くのはやめられない。
買ってよかったか、と聞かれたら

このマイクを買った理由は、α7IIIに繋げる外部マイクが欲しかったという、それだけのことでした。
その目的は、届いた日にあっさり達成されました。内蔵マイクとは比べるまでもなくクリアに録れるし、カメラに載せた見た目もすっきり収まる。買った理由の部分は、期待通りです。
想定外だったのは、そこから先でした。
通話が快適になってしまったんですよ。
音質のために買ったわけじゃないマイクなのに、胸元に付けているだけで、姿勢を気にせず1時間しゃべれる。マイクの前に体を持っていく、あの無意識の動作がまるごと消えた。これは買う前にまったく想像していなかった収穫です。
結局、MV7+とどう使い分けるのか
聴き比べた結論として、音そのものはMV7+が上です。胸元に付ける以上、反響音とサ行の差は残ります。それは前半で書いた通り。
でもそれは、このマイクの敗北を意味しません。そもそも守備範囲が違うので。
- 机の前に座って撮る/配信する/通話する → MV7+が使える場面なら、MV7+でいい
- カメラに繋ぐ/外で撮る/動く相手を撮る → MV7+では物理的に無理。ここがDJI Mic Mini 2Sの領域
要するに「MV7+が使えない場所を埋めるために買った」という当初の狙い通りに収まりました。
そして面白いのが、その線引きが思ったより曖昧だったこと。MV7+が使えるはずのデスクでも、1時間の通話で相手は気づきませんでした。「使えない場所を埋めるマイク」のつもりが、使える場所にも普通に居座れてしまった。
こんな人には合うと思います
- カメラの内蔵マイクでAF音を拾って困っている人。外部マイクにするだけで解決します
- 配信用マイクは持っているけど、動画用に別のマイクが欲しい人。守備範囲が被らないので、2本目として素直に機能します
- 喋るときにマイクとの距離を気にするのが面倒な人。撮影に限らず、通話でも効きます
逆に、複数のカメラで撮ってタイムコードで同期させたい人は上位のMic 3を見た方がいいです。そこはMini系では埋まりません。
そしてもうひとつ。この記事の評価は全部「声を主役に録る」前提での話です。環境音を含めて自然に残したい撮影は、僕自身がまだ試していません。そこを重視する人は、別の検証を探してください。
これから試すこと
買った動機のひとつだった子どもの撮影は、まだ試せていません。走り回る相手にピンマイクを付けたら実際どうなるのか。ここは実際にやってから追記します。
それと、内部録音した音と受信機経由の音の聴き比べもまだです。32bit floatで22時間録れるという保険が、実際どこまで効くのか。これも追って書きます。
発売から3日後に届いて、ここまでで数日。まだ全部を試したわけじゃありません。
それでも、手元にマイクが2本ある状態が、思っていたより面白いというのが今の実感です。声はこっち、手元の音はあっち。今まで1本しかなかったときには考えもしなかった選択肢が、勝手に増えていく。
まだしばらく、いじり倒すことになりそうです。


コメント