
足音を聴くために、IE 100 PROを買った。
音楽を聴くために、IE 300を選んだ。
同じゼンハイザーの「IE」シリーズなんですけど、僕の中でこの2本は、ぜんぜん違う役割で生きてるんですよね。IE 100 PROはいまや仕事もゲームも何でもこなす万能機。でも”音楽にどっぷり浸る”ための一本だけは、ずっとIE 300なんです。
IE 300を手に入れたのは2022年の7月。気づけばもう4年、音楽はずっとこのイヤホンで聴いてきました。あの中音域のつやっぽさ。一度この鳴り方を知っちゃうと、なかなか戻れないんですよ、これが。
ただ、ですよ?
僕、元をたどればFPSで日本一を獲ったこともある、根っからのゲーマーなんですね。だからどうしても考えちゃうわけです。「このIE 300、ゲームでもイケるんじゃない?」って。それで、ちゃんと試しました。…結果、素直には頷けない発見があったんですけど 笑
この記事でお話しするのは、ざっくりこの2つです。
- 音楽を聴く道具として、IE 300は本当に「買い」なのか
- 競技でFPSやってた目線で見て、ゲーミング用途でもアリなのか
4年間ずっと使い込んできた立場から、忖度なしの本音で書きますね。「音楽もゲームも1本でいけたら最高じゃん」——そう思ってる人ほど、最後まで読んでみてほしいんです。
- 2022年から4年、音楽用のメインとして使い続けてるイヤホン
- 普通に挿すだけ(シングルエンド)でもう完成度が高い。どっしり低音+つやのある中音域
- バランス接続できる環境なら、空間や高音の見通しがさらに開いてもう一段上へ(あくまで”沼の先”のボーナス)
- 音楽は◎。でもFPSなどゲームには△(強い低音が足音を埋めて邪魔する)
- 結論は用途で棲み分け。「ゲームならIE 100 PRO、音楽ならIE 300」
何のために買って、なぜ4年手放さなかったのか
イヤホン選びでいちばん最初に決めるべきって、「何のために使うか」だと思うんですよね。ここがブレてると、スペックの数字に振り回されて、結局しっくりこないやつを掴んじゃう。僕がIE 300を選んだときは、そこだけは最初からハッキリしてました。
音楽を「ちゃんと」聴くために選んだ
理由はシンプルで、腰を据えて音楽を聴く時間を、もう一段引き上げたかったからなんです。
僕、IE 100 PROも持ってるんですよ。あっちは仕事もゲームも音楽も、何でも1本でこなしちゃう万能タイプでしてね。普段は耳に入れっぱなしの”そのまま使える相棒”なんです。だから日常の音はだいたいアレで足りちゃう。
…ただ、休みの日に「よし、今日は腰を据えて音楽聴くぞ」ってなる瞬間だけは、別なんですよね。そういう時間のためだけに、わざわざもう一本ほしかった。それがIE 300でした。
そうそう、ゆくゆくはバランス接続でも鳴らしてみたいな、くらいの気持ちもありました。…バランス接続、って急に言われてもですよね 笑 ざっくり言うと、左右の信号を別々の経路で送って、音の分離や純度をグッと引き上げる繋ぎ方のこと。沼の入り口でもあります。
4年経っても、一軍から外れなかった
ガジェットって、買った直後がいちばんテンション高いじゃないですか。で、半年もすれば引き出しの肥やし…ってパターン、僕も何度もやらかしてます 笑
でもIE 300は、違ったんですよね。2022年7月に買って、今もデスクのいちばん手が届くところに置いてあります。新しいイヤホンを試すたびに「やっぱりこっちだな」って、結局戻ってきちゃう。ガジェットブロガーなんてやってると新しい機材が次から次へ入ってくるのに、それでも残ってる。4年です。
これ、地味にすごいことだと思いませんか?
じゃあ、何がそんなに僕を引き留めてるのか。…その正体は、次でいよいよ「音」の話をしながら書きますね。

白状すると、買った当初はケーブル代をケチって、ずっと普通の繋ぎ方のままだったんですよ。…で、それでも普通に大満足でした 笑 あとからバランスを試して「お、まだ上があるんだ」とはなったけど、ケチってた数ヶ月もずっと幸せだったので、後悔はゼロです。
音で「ゾワッ」とした瞬間 — IE 300の音質
で、肝心なのは音ですよね。「3万円前後のイヤホン、そんなに違うもん?」って思ってる人、わかります。僕も最初は半信半疑でした。でも、これだけは言わせてください。”場面ごと記憶してる音”って、そうそう無いんですよ。IE 300には、それがあったんです。
まずは素の音 — どっしりした低音と、つやのある中音域
最初に挿して鳴らしたときの第一印象は、「どっしりしてるな」でした。低音が下のほうでしっかり構えてて、音楽全体をぐっと支えてくれる感じ。ズンズン前に出てくる低音じゃなくて、土台として効いてるタイプですね。
その上に乗っかる中音域が、なんというか…つやっぽいんですよ。ボーカルがすっと前に出てきて、声の湿り気みたいなものまで聞こえてくる。
これがIE 300の”素の顔”です。解像度で圧倒してくるタイプじゃなくて、音楽を気持ちよく浴びさせてくれるリスニング寄りの鳴り方。ながら聴きでも疲れない理由は、たぶんここにあります。
普通に挿しただけで、ゾワッときた
で、本番はここからなんですよ。
ある晩、特別なことは何もせず、普通に挿してEGOISTの「Ghost of a Smile」を流したんです。この曲、出だしがピアノ一本だけなんですよね。その前奏が耳に流れ込んできた瞬間——僕、手が止まりました。何か作業しながら聴くつもりだったのに、ピアノの一音一音がやけに艶っぽくて、すぐ近くにある。気づいたら、動けなくなってたんです。
そして前奏が終わって、女性ボーカルがすっと入ってきた。…その瞬間、腕の毛がぞわっと立ちました。声の質感が、息づかいごと、目の前にいるんですよ。
で、サビ。…不覚にも、ちょっとうるっときたんですよね。イヤホンの音で泣きそうになる日が来るなんて、思ってなかったです 笑
あの鳥肌の正体、冷静に考えるとこうです。
まず、ボーカルの距離がやけに近い。声の質感も、息づかいも、すぐ目の前にある感じ。そしてピアノの一音が、芯までつやっぽく響くんですよ。派手な演出は何もないのに、音の”濃度”みたいなものがグッと上がって、気づいたら全部に聴き入ってた。この”濃さ”が、IE 300の正体だと思うんですよね。
ここ、誤解されたくないので先に言っておきますね。マルチBA型の”解像番長”みたいな、細部をキラキラ描き出す鳴り方とは、ちょっと方向が違います。IE 300はダイナミック型なので、解像度で感心させるより、音楽を塊でドンと浴びせて感情を動かしてくるタイプ。理屈じゃなく、気持ちで効いてくるんですよ。
しかも——ここまで全部、バランス接続みたいな特別な構成なしの”普通に挿しただけ”の話なんです。それでこれだけ気持ちいい。そこは安心してください。
そのうえで、欲を言えば、です。バランス接続できる環境があるなら、もう一段上があります。音の置き場所がさらに左右へ広がって、高音の見通しが良くなって、一つひとつの輪郭がくっきりしてくる。僕も、環境が許すなら迷わずバランスで聴きたい派です。…ただこれは”沼の先”の話。普通に挿すだけで十分すぎるほど幸せなので、最初から身構えなくて大丈夫ですよ。
IE 100 PROと並べて、はじめてわかる差

「つや」とか「濃さ」とか言われても、ピンとこないですよね。僕も並べて聴くまでは、そこまで違うとは思ってなかったんです。
でも同じ曲をIE 100 PROとIE 300で行ったり来たりしてみると、差がはっきりします。IE 100 PROはとにかくフラットで素直。色をつけずに、ありのままを出してくる優等生。対してIE 300は、中音域につやを乗せて、低音で全体を包んでくる。同じ曲のはずなのに、IE 300のほうが”うっとりする瞬間”が明らかに多いんですよ。
どっちが上って話じゃないです。IE 100 PROの素直さは仕事にもゲームにも効くし、IE 300のうっとり感は腰を据えて音楽を聴くときに効く。役割が、きれいに分かれてるんですよね。

この音を知っちゃってから、昔さんざん聴いたお気に入りアルバムを片っ端から”再履修”する週末が始まりました。同じ曲のはずなのに知らない音が見つかるの、ちょっと反則ですよね。気づいたら日曜が一日溶けてました 笑
…で、ここまで読んで「で、ゲームは?」って思ってますよね。競技でFPSやってた身としては気になるので、そこはちゃんと試したんです。次は、ありのまま書きますね。
じゃあゲームでは? 競技でFPSやってた僕が試した
あれだけ音楽で褒めたんだから、ゲームでも最強なんでしょ? …って期待しちゃいますよね。でも、ここからはIE 300にとって、ちょっと耳の痛い話です。
足音と定位 — 音楽の名手が、ここでは苦戦する
実際にFPSで何戦か回してみました。結論から言うと、足音はちょっと拾いにくいです。
音楽のときあれだけ気持ちよく包んでくれた鳴り方が、ゲームだと逆に働くんですよね。足音みたいな小さい音が全体の鳴りにふっと溶けて、埋もれる瞬間がある。IE 100 PROなら「あ、こっちから来てる」がスッと分かるのに、IE 300は一拍わかりにくい。
定位——音がどっちから鳴ってるか、も、悪くはないんですけど”そこまで”です。音を気持ちよく一体で包む鳴り方なので、方向の輪郭がほんの少し甘くなる。音楽だとその”包まれる感じ”が心地よさなのに、ゲームだと”正確さ”のほうが削れちゃう。痛し痒しなんですよね。
いちばんの理由は「低音」— 武器が、ここでは邪魔になる
で、ゲームで一番のネックが、あのどっしりした低音です。
音楽では「全体を支える土台」として最高だった低音。これがゲームだと、銃声や爆発が鳴るたびにドンッと前に出てきて、これがけっこう、うるさい。耳が休まらないんですよ。撃ち合いが激しい場面ほど低音が暴れて、その足元で鳴ってるはずの足音や物音が押し流されていく感じ。
これ、専門的にはマスキングって呼ばれる現象でして。大きい音(低音の爆発)が、小さい音(足音)を覆い隠しちゃうんですね。IE 300は音楽を豊かに鳴らすために低音をしっかり持たせてるぶん、ゲームだとそれがまるごと裏目に出る。
30分くらいなら迫力があって楽しいんですけど、何時間も回してると、だんだん耳が疲れてくる。音楽用の”心地よさ”と、ゲーム用の”疲れにくさ”って、別物なんだなと痛感しました。

ちなみにこの”低音うるさい問題”、イコライザーで低音をガッと削れば多少マシにはなります。…なるんですけど、それIE 300の良さを全消しにする行為なんですよね 笑 本末転倒すぎて、3分で元に戻しました。
つまりIE 300は、音楽では手放せないのに、ゲームでは勧めにくい。…じゃあ結局、誰が買うべきなのか。最後に、4年使った僕の結論をまとめますね。
IE 300は、こんな人におすすめ(と、向かない人)
ここまで読んでくれた人なら、もうなんとなく見えてますよね。IE 300は、ハマる人にはとことんハマるけど、用途を間違えるとモヤる。だから”誰に向くか”を、はっきり分けておきます。
音楽メインなら迷わなくていい — こんな「音の好み」の人に刺さる
そもそも、世の中イヤホンなんて星の数ほどあるじゃないですか。その中でIE 300を選ぶ意味って、”音の方向性”がハッキリしてることなんですよね。だから、刺さる人の条件もハッキリしてます。
- ボーカルや楽器の”生々しさ”にゾクッとしたい人。声の質感やギターの余韻までしっとり味わいたいタイプには、あの中音域のつやがドンピシャです
- 低音は「量」より「土台」がほしい人。ドンドン主張してくる低音じゃなく、音楽全体をどっしり下から支える低音が好みなら相性◎
- 音を”分析”するより、音楽に”浸りたい”人。細部を腑分けするモニター的な聴き方より、気持ちよく音を浴びたいタイプ向けです
- 機材で音を育てるのが楽しい人。普通に挿すだけでも完成度は高いんですが、バランス接続でさらに伸びるタイプなので、「環境を整えて鳴らし込む」過程ごと楽しめる人には沼として最高です
逆に、こういう人は他を当たったほうが幸せかもです。とにかく解像度・情報量で殴ってほしい人(→マルチBAの解像番長系へ)、それと挿してそのまま、手軽に完成された音がほしい人(IE 300は鳴らし込んでナンボなので)。ここはきっぱり線を引いておきますね。
で、「自分はどっちなんだ」って迷ったときの基準は、たぶんこれ一個です。音楽を”聴く”時間より、”浸る”時間がほしいか? そこにYesなら、IE 300は4年後もあなたの一軍に居座ってますよ。
ゲームメインなら、別を選んだほうがいい
逆に、こういう人はIE 300じゃないほうが幸せです。
- FPSで足音や定位を武器にしたい人
- 長時間プレイで耳の疲れを抑えたい人
同じゼンハイザーなら、フラットで足音がスッと拾えるIE 100 PROのほうが断然向いてます。実際、僕がゲームでメインに使い続けてるのもIE 100 PROのほうですしね。詳しくはこっちにまとめてます。

用途でスパッと割ると、こんな感じです。
| 用途 | IE 100 PRO | IE 300 |
|---|---|---|
| 音楽鑑賞 | ○ しっかり聴ける | ◎ うっとりできる |
| ゲーム(FPS) | ◎ 足音くっきり | △ 低音が邪魔しがち |
| 長時間の疲れにくさ | ◎ フラットで楽 | ○ 低音で少し疲れる |
| 価格帯 | 1万円台前半 | 3万円前後 |
| ひとことで | 万能の相棒 | 音楽専用の贅沢 |
まとめ|足音のための一本は、別にある
IE 300を手に入れたのは2022年7月。あれから4年、音楽はずっとこのイヤホンで聴いてきました。新しい機材が山ほど入れ替わっていくこの仕事で、4年間ずっと”一軍”に居座り続けてる。それだけで、もう答えな気がするんですよね。
発売から数年が経って、もう”型落ち”扱いされる時期かもしれません。でも、こと「音楽を聴く道具」としては、いまだに現役どころか僕の一軍です。むしろ登場した頃より価格がこなれてきたぶん、今のほうが手を出しやすかったりするんですよ。今から買っても、まったく遅くないです。
ゲームには、ハッキリ言って勧めません。足音のための一本は、別にちゃんとあります。でも——”音楽を聴く時間そのもの”を一段上げたいなら、IE 300は本当にいい選択です。
普通に挿してGhost of a Smileを流した、あの日の、腕の毛が立つ感じ。あれを4年経った今でも味わえてる。それが、僕がこのイヤホンを手放さない理由の、全部です。

ゲーム用と音楽用で2本持つの、贅沢に聞こえます? でも”1本で全部”を狙って妥協するより、用途で割り切ったほうが、結局どっちも満足度高いんですよ。これ、4年かけて出した僕の結論です 笑
気になってる人は、難しく考えなくて大丈夫です。まずは普通に挿して、好きな曲を一曲流してみてください。それだけで、たぶん”音楽を聴く時間”が変わります。…で、もしバランス接続できる環境があるなら、その先の景色も待ってますよ。




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